障害者施設でのコミュニケーションの取り方は、利用者さんの障害の特性や個々の性格に応じて工夫が必要です。大切なのは「安心できる関わり」と「尊重の姿勢」です。
基本姿勢
相手を一人の人として尊重する
「してあげる」ではなく「共に行う」という意識を大切にする。
ゆっくり・丁寧に
焦らず、余裕をもった関わり方をする。
観察する力を持つ
表情・仕草・声のトーンなどから気持ちを読み取る。
コミュニケーションの工夫
1. 言葉で伝えるとき
短く・簡単な表現を使う
一度に多く言わず、一つずつ伝える
聞き返して確認する(例:「〇〇でいいですか?」)
積極的に「ありがとう」「いいですね」とポジティブな声掛け
2. 非言語コミュニケーション
アイコンタクトや笑顔で安心感を与える
うなずき・ジェスチャーを交えて伝える
相手のパーソナルスペースを尊重(近づきすぎない)
3. 障害特性ごとの工夫
知的障害のある方:
わかりやすい言葉、絵カードや実物を使うと理解しやすい。
身体障害のある方:
本人が伝えやすい手段(筆談・機器・ジェスチャー)を尊重。
発達障害のある方:
曖昧な表現を避け、具体的に伝える。見通しを示す。
聴覚障害のある方:
口元を見せる、筆談、手話や身振りを用いる。
視覚障害のある方:
声かけで状況を伝える(「右に椅子がありますよ」など)。
やってはいけないこと
・子ども扱いするような言葉づかい
・無理に話させたり、急かしたりすること
・本人を差し置いて家族や職員だけに話すこと
実習中に大切な姿勢
「まず聞いてみる」…相手の意志を確認する
「合わせすぎない」…自分らしく自然に接する
「小さな変化に気づく」…安心感や信頼につながる
☆一番大事なのは「正しい方法」よりも「安心できる雰囲気をつくること」です。
「実習ノートに書けるコミュニケーションの振り返り」
🌱 実習ノートに書ける振り返り例(コミュニケーション)
1. 基本フォーマット
1. 場面:いつ・どこで・誰と
2. 自分の対応:どんな声掛けや行動をしたか
3. 相手の反応:表情・言葉・態度の変化
4. 気づき:うまくいった点、改善点
5. 今後の工夫:次回に活かせること
2. 具体的な記入例
例① 知的障害のある方との関わり
場面:作業中に利用者さんが分からず手を止めていた。
自分の対応:「ここをこうするといいですよ」と短く声をかけ、実際に一緒にやってみた。
相手の反応:笑顔で「できた」と言っていた。
気づき:長い説明より、一緒に行動で示す方が伝わりやすい。
今後の工夫:できた時に「いいですね」と肯定的な声かけを増やしたい。
例② 聴覚障害のある方との関わり
場面:休憩時間に利用者さんが話しかけてくれた。
自分の対応:口元を相手に向けて、ゆっくり話した。わからない部分は筆談を使った。
相手の反応:うなずきながら話を続けてくれた。
気づき:自分の表情や口の動きを意識するだけで安心感が生まれると感じた。
今後の工夫:筆談用のメモを常に持ち歩きたい。
例③ 就労支援の場面
場面:作業が難しく、利用者さんがイライラしていた。
自分の対応:すぐに指示を出さず、「どうしましたか?」と声をかけて相手の気持ちを聞いた。
相手の反応:「難しい」と正直に話してくれ、落ち着いた。
気づき:まず気持ちを受け止めることが大切。
今後の工夫:すぐに解決に向かわず、気持ちを共感する姿勢を意識したい。
3. 振り返りリスト(簡易チェック)
□ 短い言葉で伝えられたか
□ 相手の表情や態度を観察できたか
□ 無理に話させず、聞く姿勢を持てたか
□ 「ありがとう」「いいですね」と肯定的に声掛けできたか
□ 相手の特性に合わせた方法(筆談・ジェスチャー等)を使えたか
👉 このフォーマットと例を使えば、毎日の実習ノートが書きやすくなります。
「生活介護」と「就労支援」ごとのコミュニケーション振り返り
では、生活介護と就労支援に分けて「コミュニケーションの振り返り例」を整理します。
🌼 生活介護でのコミュニケーション振り返り例
例① レクリエーションの場面
場面:塗り絵の時間に「どの色を使おうかな」と迷っていた。
自分の対応:「赤と青、どっちにしますか?」と選択肢を示した。
相手の反応:笑顔で「赤!」と答えて作業を続けられた。
気づき:選択肢を絞ると答えやすく、自信につながる。
今後の工夫:できた作品を一緒に喜ぶ声掛けをしたい。
例② 休憩中の関わり
場面:休憩室で静かに座っていた利用者さんに声をかけた。
自分の対応:「今日は楽しいことありましたか?」と簡単な質問をした。
相手の反応:小さくうなずきながら、「カラオケ」と教えてくれた。
気づき:雑談を通じて安心感や信頼関係が深まる。
今後の工夫:相手の表情を観察し、話しやすい雰囲気をつくる。
💼 就労支援でのコミュニケーション振り返り例
例① 作業の指導
場面:部品を袋に入れる作業で手順が止まっていた。
自分の対応:「まず〇〇を入れて、次にテープを貼ります」と手順を分けて説明。
相手の反応:少し考えた後、作業を再開できた。
気づき:複数の指示を一度に伝えると混乱する。
今後の工夫:視覚的にわかるように手順表やジェスチャーを併用したい。
例② ミスがあった時
場面:作業で部品を入れ間違えてしまった利用者さんが困っていた。
自分の対応:「大丈夫ですよ。一緒に直しましょう」と声をかけた。
相手の反応:安心したように「はい」と答えて直すことができた。
気づき:失敗を責めずに受け止めることで、挑戦する意欲が続く。
今後の工夫:できた時に「ここはすごく良かった」と強みを伝える。
✅ 実習ノートにまとめるときのチェックリスト
□ 相手が安心できるような声掛けができたか
□ 一度に多く伝えず、区切って説明できたか
□ 相手の表情・しぐさを観察して気持ちを読み取れたか
□ 「できた」「ありがとう」と肯定的に伝えられたか
□ 改善点と次回への工夫を書き残せたか
👉 これをベースに書けば、生活介護でも就労支援でもしっかり振り返りできます。
「良かった関わり」と「改善したい関わり」を対比で書けるテンプレート
「良かった関わり」と「改善したい関わり」を対比で書ける実習ノート用テンプレートを整理します。
✍️ 実習ノート振り返りテンプレート(対比型)
1. フォーマット
1. 場面:いつ・どこで・誰と
2. 良かった関わり
自分の対応
相手の反応
学び・気づき
3. 改善したい関わり
自分の対応
相手の反応
改善点・次への工夫
2. 記入例(生活介護)
場面:レクリエーション(塗り絵)の時間
良かった関わり
対応:「赤と青、どっちにしますか?」と選択肢を示した。
反応:利用者さんが笑顔で「赤!」と答え、自分から進んで作業できた。
気づき:選択肢を示すと答えやすく、安心して取り組める。
改善したい関わり
対応:別の利用者さんには「好きな色を選んでください」と伝えた。
反応:しばらく手が止まってしまい、選べない様子だった。
改善点:抽象的な指示ではなく、選択肢を具体的に提示する工夫が必要。
3. 記入例(就労支援)
場面:袋詰め作業の支援
良かった関わり
対応:「まず袋を広げて、そのあと部品を入れます」と手順を分けて説明。
反応:相手は落ち着いて手順通りに進められた。
気づき:手順を区切ると理解がしやすくなる。
改善したい関わり
対応:他の利用者さんには一度に三つの手順をまとめて説明してしまった。
反応:混乱して作業が止まってしまった。
改善点:次からは一つずつ伝え、必要に応じて身振りや手順表を使う。
✅ チェックリスト(書いた後に確認)
□ 良かった点と改善点を両方書けたか
□ 相手の反応を具体的に書いたか(表情・言葉・行動)
□ 「次にどうしたいか」までまとめられたか
対比型にすると、ただの出来事メモではなく「自分の成長の記録」として評価されやすいです✨