
障害のある人やその家族の相談窓口となり、生活全般の困りごとを一緒に整理し、必要な福祉サービスや地域資源につなげていく専門職です。
障害者総合支援法にもとづいて配置されており、福祉の「コーディネーター」の役割を担います。
主な役割
- 相談対応
- 日常生活や就労、医療、福祉に関する困りごとを聞く
- 本人や家族の思いを整理して一緒に考える
- サービス等利用計画の作成
- 障害福祉サービスを利用する際に必要な計画書を作成
- 本人の希望や課題をふまえて、サービスの種類や利用頻度を整理
- 関係機関との調整
- 施設、事業所、病院、学校、市区町村などとの連絡・調整
- チーム支援がスムーズに進むよう橋渡しをする
- モニタリング
- サービス利用が適切に行われているか、生活に変化があるかを定期的に確認します
- 必要に応じて計画を見直すことがあります
なるための要件
相談支援専門員になるには、
- 指定された 実務経験(障害福祉・介護・医療・児童福祉などで5年以上、もしくは相談業務3年以上)
- 相談支援従事者初任者研修の修了
が必要です。
特徴
- 本人の 「こう暮らしたい」 という思いを尊重する姿勢が大切
- 福祉サービスだけでなく、地域の生活資源(就労、余暇、住宅、医療など)を幅広く結びつける
- 障害種別(知的・精神・身体・発達など)を問わず対応することが多い
簡単に言うと、相談支援専門員は 「利用者と制度・地域をつなぐナビゲーター」 です。
1日の仕事の流れ(例)
相談支援専門員は事務所にいる時間と外に出ている時間が半々くらいになることが多いです。
午前
- メール・電話対応(利用者・家族・事業所・行政からの問い合わせ)
- 面談(来所・訪問):新規相談や定期モニタリング
- サービス利用計画の作成や見直し
午後
- 関係機関との会議(ケース会議、サービス担当者会議)
- 病院や事業所への訪問(連絡・調整)
- 役所とのやりとり(給付申請の確認など)
夕方
- 記録・書類作成(相談記録、計画書、モニタリング結果)
- 翌日の訪問準備
利用者・家族との関わり方の工夫
- 傾聴が基本
- まずは「話を聞いてもらえた」と感じてもらうことが安心につながる
- 専門用語を使わず、わかりやすく
- 「モニタリング=様子を確認すること」など、日常的な言葉に言い換える
- 本人の希望を引き出す工夫
- 「どうしたいか」が言いにくい人には、選択肢を示す
- 本人の表情やしぐさも大切な情報
- 家族の思いも尊重しつつ、本人中心で
- 家族の希望と本人の希望が違うこともある → バランスをとる調整役になる
実習・初任者が学ぶべき視点
- 観察の視点
- 利用者の表情・態度の変化
- 家族の負担感や気持ち
- 関係機関とのやりとりの仕方
- 姿勢・態度
- 中立的・客観的な立場を意識する
- 利用者の味方でありながら、行政や事業所とも協力できる柔軟さ
- 実習で意識したいこと
- 先輩の面談や会議を見学し、「どんな聞き方・伝え方をしているか」観察する
- 記録の仕方(事実と意見を分ける書き方)を学ぶ
- 「本人の望む生活」をどう支えるか、常に軸におく
相談支援専門員は 「本人の声を聴き、それを地域や制度と結びつける橋渡し役」。
実習や初任者はまず「聴く」「観察する」「調整の工夫を見る」ことが大切です。
相談支援の更新
相談支援専門員が作成する サービス等利用計画 には有効期間が定められています。
- 通常は1年ごと に更新(区市町村が決定)
- 必要に応じて短く設定される場合あり(例:状態の変化が大きいときは6か月)
- 更新の際は、本人や家族・サービス事業所と会議(サービス担当者会議)を行い、計画を見直して新しい計画書を作成
更新=「その人の生活や希望に沿って計画が続いているか確認し、見直すこと」
モニタリング期間
サービス等利用計画を作成した後、定期的に モニタリング(経過確認) を行います。
基本的な期間
- 6か月ごと に実施(半年に1回)
- 計画の有効期間内に、少なくとも1回以上モニタリングが必要
例外的に短縮する場合
- サービス導入直後(安定していないとき → 1か月~3か月で確認)
- 本人の状態に変化が大きい場合(体調・生活リズム・就労など)
- 家族の支援状況が変わった場合
モニタリングでは
- サービスが実際に使えているか
- 本人の生活に合っているか
- 課題や希望が変わっていないか
を確認し、必要があれば 計画を修正 します。
ポイント
- 更新=1年ごとの大きな見直し
- モニタリング=半年ごとの定期確認(+必要に応じて随時)
モニタリング記録の観察チェックリスト
① 基本情報・生活状況
- 体調の変化(睡眠・食事・服薬・体重の増減など)
- 生活リズム(昼夜逆転、遅刻・欠席の有無)
- 家庭での様子(家族との関係・支援状況の変化)
- 住環境(引っ越し、設備の使いやすさ)
② 本人の思い・希望
- 本人が「どう感じているか」を聴けたか
- サービス利用に対して「満足」「不満」「希望の変更」などの声
- 将来への希望や課題(就労・余暇・人間関係など)
③ サービス利用状況
- サービスが計画どおり利用できているか
- 提供内容が本人に合っているか(例:時間帯・回数・支援方法)
- サービススタッフとの関係性(安心感・信頼感があるか)
- サービス間の連携がスムーズか
④ 課題の有無・新たなニーズ
- 新しく困っていることは出ていないか
- 以前の課題は改善・変化しているか
- 必要な支援(例:医療、就労、金銭管理など)が増えていないか
⑤ 今後の対応
- 計画の修正が必要かどうか
- サービス担当者会議を開く必要があるか
- 次回のモニタリングまでに確認するポイント
モニタリング記録を書くときのコツ
- 事実と意見を分けて書く
- 事実:「週3回の通所に欠席なし」
- 意見:「生活リズムが安定してきていると思われる」
- 本人の言葉をできるだけ記録する
- 「○○さんが『もっと外に出たい』と話した」など
- 簡潔にまとめる
- 読む人(行政や事業所)がすぐに状況を理解できるようにする
このリストを使えば、モニタリング時に「何を見て、何を聞くか」が整理しやすくなります。
年齢やサービス利用による主な書類作成
① 共通で必要になる書類
- サービス等利用計画(案・本書)
→ 相談支援専門員が作成。市町村へ提出。 - モニタリング記録(6か月ごと、または必要に応じて)
- サービス担当者会議の記録
- 相談記録(日々の対応記録)
② 年齢による違い
児童(18歳未満)
- 障害児支援利用計画(児童発達支援・放課後等デイサービス利用時に必要)
- 保護者との面談記録を重視
- 学校や教育機関との連携記録も必要
成人(18歳以上~65歳未満)
- サービス等利用計画(生活介護・就労継続支援・居宅介護など)
- 就労支援サービスの場合は、事業所との連絡記録や就労状況の確認を重点的に記録
高齢期(65歳以上)
- 障害福祉サービスから介護保険に移行するケースあり
→ 介護保険サービスのケアマネジャーとの連携記録 - 移行時に「経過記録」「サービス調整の経緯」をまとめておく必要あり
③ サービスの種類による違い
- 居宅介護・重度訪問介護
→ 本人の生活時間や支援内容を具体的に記録 - 生活介護・就労支援
→ 通所日数、活動状況、就労意欲などを重点的に確認 - 短期入所(ショートステイ)
→ 利用目的(家族のレスパイト、本人の体験)を明記 - 相談支援(地域移行・地域定着)
→ 退院・退所から地域生活への移行状況、定着の様子を細かく記録
④ 行政への提出物
- 計画書提出(新規・更新時)
- モニタリング報告書(市町村ごとに様式あり)
- サービス利用申請に必要な意見書(相談支援専門員が添付する場合もある)
ポイント
- 児童は「障害児支援利用計画」
- 成人は「サービス等利用計画」
- 高齢は介護保険との調整が必要
- サービス内容ごとに重点を変えて記録する