
はじめに
近年、地震や豪雨、感染症などのリスクが高まる中で、福祉サービス事業所においても「非常時の備え」が重要視されています。
その中心となるのが、障害福祉BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)です。
この記事では、障害福祉BCPの目的や内容、作成のポイントをわかりやすく解説します。
障害福祉BCPとは?
BCP(事業継続計画)の基本
BCPとは、災害や感染症などの緊急事態が発生した際に、事業を中断させず、利用者への支援を継続するための計画のことです。
障害福祉事業所におけるBCPは、利用者の命と生活の安全を守るための仕組みとして位置づけられています。
障害福祉BCPの目的
障害福祉サービスは、日々の生活支援が中心であり、中断が利用者の生活に大きな影響を及ぼします。
そのため、BCPを作成する目的は次の3点です。
- 利用者の安全を確保すること
- 災害・感染症時でもサービスを継続できる体制を整えること
- 職員が冷静に行動できるよう指針を示すこと
障害福祉BCPの主な内容
1. 基本方針
- 利用者と職員の命の安全を最優先にする
- サービス提供の中断を最小限にする
- 地域・行政・医療機関との連携を重視する
2. 体制整備
- 指揮命令系統(誰が判断・指示を出すのか)
- 連絡体制(職員・利用者家族・行政・地域との連絡)
- 避難場所や非常物資の確保
3. 災害・感染症別の対応計画
- 地震・台風・水害時の避難手順
- 感染症流行時のゾーニング・感染防止対策・人員配置方法
4. 事業継続のための行動計画
- 最低限維持すべき業務・人員の洗い出し
- 他事業所や在宅支援への切り替え計画
- 代替手段(電話・オンライン・訪問支援)の準備
5. 訓練と見直し
- 年1回以上の避難訓練・BCP訓練を実施
- 訓練後の課題を踏まえて計画を改善
2024年度から障害福祉BCPは義務化
厚生労働省は、2024年度(令和6年度)から、すべての障害福祉サービス事業所にBCPの策定と訓練を義務化しました。
対象となる事業所は以下のとおりです。
- 就労継続支援A型・B型
- 生活介護
- 短期入所
- 放課後等デイサービス など
義務化の背景には、「災害時でも障害者支援を止めない」ための体制づくりを全国的に推進する目的があります。
障害福祉BCP作成のポイント
1. 現場で使えるシンプルな内容にする
複雑な文書では、緊急時に役立ちません。
職員全員が理解し、すぐに行動できるシンプルな計画書が理想です。
2. 地域との連携を重視する
避難所・行政・医療機関・他事業所など、地域の防災ネットワークとの連携が欠かせません。
3. 定期的な訓練と見直し
訓練を通して、実際に行動できるかを確認し、毎年見直して改善することが重要です。
まとめ:BCPは「命を守る福祉の備え」
障害福祉BCPは、単なる書類ではなく、利用者の命と生活を守るための行動計画です。
災害や感染症はいつ起きるかわかりません。
平時から職員全員で共有し、実践的な備えを整えることが、安心できる福祉現場づくりにつながります。

