
「そこ置いて」「あれ持ってきて」
日々の支援の中で、無意識に使っていませんか?
実は、こうした「指示語(こそあど言葉)」は、発達障害のある方や認知症の方、そして緊張感の中にいる利用者さんにとって、パニックや誤解を招く大きな原因になります。
今回は、なぜ指示語が伝わりにくいのか、そして今日から使える「具体化のコツ」を解説します。
1. なぜ「指示語」はパニックの原因になるのか?
指示語(これ・それ・あれ・どれ)は、「話し手と聞き手の視点が完全に一致していること」が前提の言葉です。
しかし、支援の現場では以下のようなズレが頻繁に起こります。
- 視点の違い: 支援員が見ているものと、利用者さんが見ているものが違う。
- 記憶の保持: 直前の会話で何を指していたか忘れてしまう。
- 注意の切り替え: 別のことに集中しているとき、急に「あれ」と言われても対象を特定できない。
「何をすればいいかわからない」という不安が、焦りやパニックにつながってしまうのです。
2. 実践!「名詞」で伝える具体化の3ポイント
言葉を少し置き換えるだけで、コミュニケーションのストレスは劇的に減ります。
① 相手の視点に立って「名前」を呼ぶ
「それ」という代名詞を、固有の「名詞」に変えましょう。さらに、特徴(色や形)を加えるとより親切です。
- ✕ 不十分: 「その皿、片付けて」
- ◎ 具体化: 「その青いお皿を、流しまで持ってきてください」
② 位置関係を具体的に示す(右・左・上・下)
「あっち」「そっち」は、体の向きによって変わる曖昧な表現です。
- ✕ 不十分: 「そこにあるカバン取って」
- ◎ 具体化: 「あなたの右手側にある、黒いカバンを取ってください」
ヒント: 相手から見た「右・左」を意識することが、安心感につながります。
③ 「曖昧な言葉」を「数値・動作」に変換する
「ちゃんと」「ちょっと」といった副詞は、人によって解釈がバラバラです。
| 曖昧な表現 | 具体的な変換例(数値・動作) |
| ちょっと待って | 「時計の針が6のところに来るまで待って」 |
| ちゃんと拭いて | 「机の上を3回往復して拭いて」 |
| しっかり座って | 「背中をイスの背もたれにつけて座って」 |
3. まとめ:具体的であることは「優しさ」
「具体的に伝える」ということは、相手に「推測させる負担」をかけないということです。
- 「それ」を「名前(青いお皿)」に。
- 「そこ」を「位置(右側)」に。
- 「ちゃんと」を「動作(背中をピタッ)」に。
まずは今日、一回だけでも「あれ」を「〇〇(名詞)」に言い換えてみませんか?その一歩が、利用者さんの安心できる環境作りにつながります。

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