
障害者支援の現場では、支援技術・知識と同じくらい「言葉遣い」が大切です。声のかけ方ひとつで、利用者さんが安心したり、逆に傷ついてしまうこともあります。本記事では、障害福祉の現場で新人職員からベテランまで共通して意識すべき「言葉遣いの基本」を、具体例を交えながら分かりやすく解説します。
言葉遣いの基本は「尊厳を守ること」
障害者支援における言葉遣いの軸は、常に 相手の尊厳を守ること にあります。
特別な言葉を使うよりも、「人として当たり前に敬意のあるコミュニケーション」を徹底することが重要です。
● 敬語=正解ではない理由
丁寧すぎる言葉は距離を生むことがあります。
反対に、ため口であっても利用者の特性に合わせた「不快感のない柔らかい口調」であれば問題ない場合もあります。
● 大切なのは“関係性に合った丁寧さ”
・話す相手
・その日の気分
・理解度やコミュニケーション方法
これらを総合的に判断して、相手にとって安心できる話し方を選びます。
利用者を「子ども扱いしない」話し方
支援の場でありがちな落とし穴が、無意識の「子ども扱い」です。
● NG例
・「はい、これしてみようね〜」
・「○○できて偉かったね」
・「ちょっと待っててね、今忙しいから」
● どう受け取られる?
一見優しい言い方でも、
「上から目線」
「幼児語」
「指示的」
と感じさせてしまうことがあります。
● OK例(大人として対等に)
・「○○さん、この後××をお願いします」
・「ここまで進んでいますね。続きはどうしましょう?」
・「少しだけお待ちいただけますか?」
自己決定を尊重する言葉を使う
支援の中心は、利用者の自己決定です。
● 指示語より“選択肢”を提示する
NG:「これ食べてください」
OK:「AとBがありますが、どちらにしますか?」
● 予定を“押しつけない”
NG:「これから散歩行きますよ」
OK:「散歩と室内活動がありますが、今日はどちらが良さそうですか?」
● 意見の表現を促す
・「どう思いますか?」
・「この方法と別の方法がありますが、希望はありますか?」
自分で選べる場面を増やすことで、尊厳と主体性を守る支援につながります。
特性に合わせた言葉の工夫
障害特性に合わせて、言葉の「量」「質」「スピード」を調整することも大切です。
● 認知・理解がゆっくりな方
・短く、はっきりした文で伝える
・一度に複数の指示をしない
・視覚資料を併用する(写真・絵カード)
● 言語コミュニケーションが苦手な方
・表情・動作を合わせて伝える
・YES/NOで答えられる質問にする
・余白をもって待つ
● 感情の動きが強い方
・落ち着いたトーンでゆっくり話す
・否定語を避ける
・安心できるフレーズを繰り返す
(例:「大丈夫ですよ」「一緒にやりますね」)
相手の気持ちを傷つけない言葉選び
言葉の「響き」は、支援の質を大きく左右します。
● 不安を与える表現は避ける
NG:「なんでできないんですか?」
OK:「どうしたらやりやすいでしょうか?」
NG:「困りますよ!」
OK:「こうなると少し難しいので、一緒に方法を考えましょう」
● 責める言い方は禁物
感情が動きやすい場面でも、
「状況」と「人」を切り離して伝えることがポイントです。
感情的にならない伝え方のコツ
支援者自身の心の状態が、言葉遣いに影響します。
● 一息おいてから話す
自分がイライラしている時ほど、声のトーンが強くなりがちです。
● 状況説明+提案の構成で話す
「今○○の時間なので、××していただけると助かります」
● 相手の気持ちに共感を添える
「焦りますよね」「困りますよね」「心配になりますよね」
共感のひとことが、衝突を防ぐパワーを持っています。
言葉遣いは「技術」であり、日々上達する
言葉遣いはセンスではなく“技術”です。
意識して練習すれば、誰でも上達します。
● 今日からできる小さな実践
・語尾を柔らかくする
・選択肢を提示する
・否定語より肯定語を使う
・怒りそうになったら一拍置く
・伝える前に「相手はどう感じるか」をイメージする
支援の場で丁寧な言葉が使えると、利用者との信頼関係が深まり、トラブルも減っていきます。
まとめ:言葉遣いは「人と向き合う姿勢」が現れる
障害者支援における言葉遣いは、単なるマナーではなく、
「相手を一人の人として尊重する姿勢」 の表れです。
・子ども扱いしない
・主体性を奪わない
・特性に合わせる
・傷つけない言葉選びをする
・支援者の感情コントロールを忘れない
この5つを押さえることで、支援現場のコミュニケーションは驚くほど穏やかで質の高いものになります。




