障害者施設で初任者が気を付けるべきポイントを押さえることで、実習や初めての勤務のときに役立つと思います。
初任者が気を付けるポイント
利用者との関わり方
・敬意をもって接する(子ども扱い・上から目線はNG)
・話すスピード・声の大きさを調整(相手に合わせる)
・観察を大切に(表情・しぐさ・態度から気持ちを読み取る)
・一方的に決めつけない(本人の意志を尊重)
コミュニケーション
・言葉が出にくい方には、ジェスチャー・絵カード・筆談など工夫
・返答がなくても焦らず待つ
・聞き取りにくい発音でも、繰り返して確認する姿勢を持つ
安全面の配慮
・移動・食事・入浴・排泄などでの事故防止
・利用者の身体機能を把握して、必要以上に手を出しすぎない
・薬やアレルギー、食事制限などには特に注意
支援の姿勢
・「できることは本人に任せる」→自立支援の基本
・やりすぎる=相手の力を奪うことになりかねない
・小さな成功を一緒に喜ぶ
チームでの働き方
・わからないことは必ず先輩に確認
・記録は正確・簡潔・客観的に
・自分の判断だけで動かない(特にケアや処遇に関わること)
心構え
・最初は「慣れること」が大事(全部できなくてOK)
・失敗を恐れるより、報告・連絡・相談を徹底
・「相手から学ばせてもらう」という姿勢で関わる
「生活介護」と「就労支援」 で、初任者が特に気を付けるべきポイント
生活介護でのポイント(主に重度の障害のある方の日常生活を支援)
1. 生活動作の支援
食事・排泄・入浴・着替えなどの介助は 尊厳を大切に
できる部分は本人に任せる(全部やってあげない)
身体介助は事故防止を意識し、声かけしながら行う
2. 健康・安全
てんかん発作、嚥下障害、転倒リスクなどに敏感でいる
体調や表情のちょっとした変化も見逃さず記録・報告
3. 活動参加
無理にやらせるのではなく、本人のペースに合わせる
できたことを一緒に喜ぶ(小さな達成感を大切に)
就労支援でのポイント(軽度〜中度の障害のある方の仕事や日中活動を支援)
1. 作業のサポート
最初から「全部できる」と思わず、段階を踏んで指導
わかりやすい手順・視覚的な工夫(例:写真・チェックリスト)
注意するときは 感情的にならず、短く具体的に
2. コミュニケーション
利用者によって理解度に差があるので、同じ言い方で繰り返す
わからない様子ならやり方を「見せて」教える
3. 働く意欲を育てる
褒める・認めるを意識する
作業量よりも 「働いて役立っている」実感 を持てるように支援
4. 職場マナーの支援
挨拶、時間を守る、道具を大切に使うなどを一緒に確認
利用者同士の人間関係トラブルには 早めに気づいて対応
共通の心構え
「支援」=手助けすることではなく「その人が自分らしく生活・就労できる環境を整えること」
初任者は完璧でなくて大丈夫。大切なのは 観察・報告・相談。
利用者支援のやり方は?
「利用者支援のやり方」は、障害者施設の実習や初任者が理解しておくべき大切なテーマです。
以下のように、基本の流れと視点を確認しましょう。
利用者支援のやり方(基本の流れ)
アセスメント(利用者を理解する)
障害の種類・特性(身体・知的・精神・発達など)
得意なこと・苦手なこと
健康状態(体調、薬、食事制限)
本人や家族の希望
「この人にとって何が大切か?」を知ることから始める
目標の設定
「生活が少し楽になる」
「就労でできる作業が増える」
「自己表現の方法を広げる」
本人の意向を尊重しながら、小さな達成可能な目標を立てる
支援の実施
生活介護の場合:食事・入浴・排泄・活動のサポート
就労支援の場合:作業手順の指導、職場マナーの確認
できることは本人に任せる(=自立支援の考え方)
支援中は 声かけ・説明・観察 を忘れない
評価(振り返り)
どこまでできたか?
どんなサポートでうまくいったか?
本人の表情・態度はどうだったか?
できたことを見つけて一緒に喜ぶことが大切
記録・共有
客観的に「事実」を記録(感情や思い込みはNG)
チームで情報を共有し、次の支援につなげる
支援の基本姿勢
尊厳を守る:「してあげる」ではなく「一緒にやる」
待つ・認める・褒める を意識
小さな変化を見逃さない観察力
安全第一(転倒・誤嚥・事故防止)
報告・連絡・相談を必ず行う
「具体的な支援の方法(食事・移動・作業指導などのやり方例)」
利用者支援の具体的なやり方 を、「生活介護」と「就労支援」の両方に分けて解説します。
生活介護での具体的支援
食事支援
事前に姿勢を整える(誤嚥防止のために背中を支える、足を床につける)
一口の量を少なくし、「口に入れて飲み込んでから次」
飲み込みにくい人には、とろみをつけるなど調整
必ず声かけしながら「食べますよ」「飲みますね」
排泄支援
トイレ誘導は恥ずかしさに配慮(声かけは優しく、手早く)
自分でできる動作(ズボンを下ろすなど)は本人に任せる
おむつ交換では肌の状態(発赤・かぶれ)も観察
入浴支援
入浴前に体調確認(熱・けいれん・傷)
入浴中は滑りや転倒に注意
プライバシーに配慮し、体を拭く順番や力加減は本人に合わせる
移動支援
車いす介助は「声をかけてから」動かす
段差やスロープは必ずゆっくり
歩行補助は、手を引っ張るのではなく横で支える
就労支援での具体的支援
作業支援
手順を一度に言わず、「1つずつ具体的に」伝える
作業工程を写真・絵カード・チェックリストで示すとわかりやすい
失敗したときは叱らず、「こうするとやりやすいよ」と言い換える
仕事のモチベーション支援
完成した成果物を見せて「ここまでできたね」と具体的に褒める
難しい作業は分解して「できた感」を積み重ねる
単調な作業では、短い休憩や役割の交代を入れる
職場マナーの支援
「始業時の挨拶」「終わったら片付け」など基本行動を一緒に練習
遅刻・欠席時の対応(連絡方法など)も指導
対人トラブルが起きたら、感情的になる前に仲裁・調整
生活リズムの支援
就労継続には「体調管理」も重要
睡眠・食事・服薬などを本人や家族と一緒に確認
必要に応じて医療や福祉サービスと連携
初任者が意識すると良い共通の支援方法
1. 観察 → 声かけ → 支援 → 振り返り の流れを大事にする
2. やりすぎず、任せすぎず のバランス
3. 本人のペースに合わせる(焦らない・急がせない)
4. チームでの情報共有(気づいたことは必ず報告)
支援する上でポジショニングはどのようにしたら良いか?
「ポジショニング(利用者の姿勢・体位の調整)」は、生活介護や身体介助の場面で欠かせない支援です。
ポジショニングの基本的な考え方
目的
褥瘡(床ずれ)を防ぐ
呼吸や嚥下を楽にする
筋緊張や関節のこわばりを和らげる
できるだけ 楽に・安全に・活動しやすい姿勢 を作る
基本の姿勢とポイント
仰臥位(あおむけ)
頭:枕を入れすぎない(気道確保・首の負担を防ぐ)
背中・腰:タオルで隙間を埋めて安定させる
足:膝の下にクッション → 腰への負担軽減
かかとが浮くようにタオルを入れると 褥瘡予防 になる
側臥位(横向き)
背中にクッションを当てて安定
上側の腕や足の下に枕を入れて楽にする
体重を一点に集中させないように 30°程度の傾き が理想
座位(椅子・車椅子)
お尻を奥まで座らせ、骨盤を立てる
足が床またはフットレストにしっかりつくように調整
背中・腰・左右にクッションで支えると安定
テーブルの高さは 肘が自然に曲がる程度
ポジショニングの工夫
体位変換は 2時間おきが目安(褥瘡リスクが高い方)
「動かす」だけでなく「支える」ためにクッションやタオルを活用
介助する際は必ず 声かけ → ゆっくり動かす
本人に「この姿勢で楽ですか?」と確認する
初任者が注意すること
力まかせに動かさず、テコの原理やシーツを使って体を守る
職員の腰痛予防のためにも、正しい介助姿勢を学ぶ
施設によって「ポジショニングマニュアル」があるので必ず確認
わからないときは 先輩に必ず相談してから行う
「場面別ポジショニングの具体例(食事・安静・呼吸困難時など)」
それでは 場面別のポジショニング具体例 を確認していきましょう。
場面別ポジショニングの例
食事時のポジショニング
基本:座位(車椅子や椅子)
骨盤を立て、背中にクッションで安定
足は床やフットレストにしっかりつける
テーブルは 肘が90度程度で置ける高さ
嚥下障害がある場合:頭を軽く前に倒す(首を反らさない)
誤嚥予防につながる
安静・休息時(ベッド上)
30°側臥位(半分横向き):体重が分散し、褥瘡予防に効果的
膝や足首の下にクッションを入れると、関節のこわばり防止
かかとが浮くように支えると褥瘡予防になる
呼吸が苦しいとき
ファーラー位(Fowler位)
背もたれを30~60°程度起こす
膝を少し曲げると腹筋が緩み呼吸しやすい
テーブルや枕に上半身を預ける 前傾座位 も有効
排泄時(トイレ・ポータブルトイレ)
足が床にしっかりつくように調整
上体は少し前傾させる(腹圧がかかり排泄がスムーズ)
必要に応じて手すりで支える
入浴・清拭時
ベッドで清拭する場合:30°側臥位でクッションを背中に
入浴介助では、首・背中・膝の下をタオルで支えると安心
初任者の注意点
ポジショニングは 「支援者がやりやすい姿勢」ではなく「利用者が楽で安全な姿勢」 が基本
介助中は必ず声かけ(「右に向きますね」「頭を少し上げますね」)
動かした後は「この姿勢で楽ですか?」と確認する
施設ごとに「褥瘡予防マニュアル」「介助方法マニュアル」があるので必ず確認してください。
支援時に立ち位置も気を付けた方が良い?
支援時の「立ち位置(ポジショニングと介助者の位置)」はとても大事です。
利用者さんの 安全・安心・自立を守るために、初任者が特に気を付けたいポイントを見てみましょう。
支援時の立ち位置の基本
安全確保のため
転倒リスクがある人:横や少し斜め後ろに立ち、体を支えられる位置
歩行介助:腕を強く引っ張らず、利用者が 自分でバランスをとれる位置 に寄り添う
車いす移乗時は、利用者の正面か斜め前で、腰や膝を支えられる位置に
安心感を与えるため
視界に入る位置に立つ(後ろから急に声をかけない)
会話するときは 目線を合わせる高さ にしゃがむ
聴覚障害のある人 → 正面や口元が見える位置
視覚障害のある人 → 横(利き腕側)に立ち、声かけをしてから誘導
自立を引き出すため
利用者ができる動作を妨げない位置に立つ
(例:ボタンを留める動作 → 手元が見える位置で見守る)
必要な時だけサッと支えられるよう、半歩引いた位置 で待機
具体例(場面ごと)
食事介助:利用者の横(利き手側)、口元が見える位置に。真正面だと緊張させやすい
移動介助:手すりを使うときは、反対側に立ってサポート
入浴介助:正面よりも斜め横 → プライバシーを保ちつつ安全確保
会話・活動支援:真正面でじっくり話すときもあれば、並んで座って自然に話すこともある
初任者が気を付けたいこと
相手に「安心感」を与える立ち位置を意識する
必要以上に近づかない(圧迫感・依存を防ぐ)
相手の視点に立って考える(この位置なら安心?邪魔にならない?)
不安があれば必ず 先輩に確認してから動く