
なぜ支援には“肯定的フィードバック”が必要なのか?
支援現場では、利用者の力を引き出すために「どんな声かけをするか」が大きな影響を与えます。
行動を伸ばしたいときほど、効果を発揮するのが肯定的フィードバック(ポジティブフィードバック)です。
肯定的フィードバックとは、
「できたこと」「努力したこと」「挑戦したプロセス」
に焦点を当てて伝える関わりのこと。
ただ褒めるだけではなく、
「行動の再現性」を高める声のかけ方である点がポイントです。
支援の質を高めたい、新人育成にも使える言葉の技術として、現場で役立つ形で解説します。
肯定的フィードバックとは?|単なる“褒める”とは違う技術
肯定的フィードバックの定義
肯定的フィードバックとは、
具体的な行動や取り組みに注目し、それを言語化して相手に伝える支援技術のこと。
特徴は次の3つです。
- 結果よりもプロセスに注目する
- 相手の主体性を尊重する
- 「またやってみよう」と思える視点を渡す
心理学的には、学習意欲や自己効力感(できると思える感覚)を高める効果があるとされています。
褒めるとの違い
褒める:
→「すごい」「えらい」など評価が中心(主観)
肯定的フィードバック:
→「〇〇ができていた」「△△に取り組んでいたね」のように行動が中心(客観)
支援現場では、
行動や努力を“見える化”して返すことが、再現性のある成長につながるのです。
支援で使える“肯定的フィードバック”の声のかけ方のポイント
① 行動を具体的に伝える
悪い例:
「今日はよかったね!」
良い例:
「自分から『やってみます』と言ったところがとてもよかったです。」
行動を具体的に言葉にすることで、相手が「どの行動が良かったのか」を理解できます。
② プロセスに注目する
結果が出ていなくても、挑戦や変化を伝えることが重要です。
例:
「難しいところもあったけど、最後まで続けようとしていたね。」
努力=“価値”として返すと、行動意欲が高まります。
③ 相手の意図・選択を尊重する
支援の基本は「自分で選んだ」感覚を守ること。
例:
「さっき、自分で順番を決めて進めていたね。自分で考えられていたのが良かったよ。」
これは意思決定支援にもつながる視点です。
④ 比較しない・評価しない
比較はプレッシャーになります。
悪例:
「〇〇さんより上手だね」
良い例:
「昨日よりも丁寧に取り組めていましたね」
成長の基準は“自分自身”に置きましょう。
⑤ 短く・自然に伝える
長い説明は聞く側の負担になります。
例:
「手伝い、助かりました」
「待てたね」
「ありがとう、気づいてくれたんだね」
日常の中に自然に混ぜ込むのが続けるコツです。
支援でよく使う肯定的フィードバック例(場面別)
行動を引き出したい場面
- 「まず一歩を踏み出せたね」
- 「自分で手を伸ばしてくれたのが良かったよ」
自立的な行動を促したい場面
- 「自分で選べたね」
- 「困ったとき、声をかけてくれたのが助かったよ」
気持ちを切り替えた場面
- 「気持ちが落ち着いてきたね」
- 「深呼吸していたの、気づいたよ」
挑戦に寄り添う場面
- 「難しかったけど、続けていたね」
- 「チャレンジする姿勢がすてきだよ」
肯定的フィードバックがもたらす支援効果
① 利用者の自己効力感が高まる
“できたことがある”という実感は、行動のエネルギーになります。
② 行動の再現性が高まる
どの行動が良かったのか理解しやすく、繰り返しやすくなります。
③ 支援関係の安心感が強まる
否定や指摘が中心だと、防御的になりやすくなります。
肯定的フィードバックは、「見てくれている」という安心感を育てます。
④ 問題行動の減少にもつながる
良い行動を“見逃さずに拾う”ことで、ポジティブな行動が増えていきます。
肯定的フィードバックを習慣化するためのコツ
① 小さな変化を見つける“観察力”を育てる
行動観察を丁寧に行うことで、フィードバックの質が上がります。
② 一日3つ「良い行動を拾う」習慣
職員同士で共有すると、チーム全体が“肯定的支援”に変わります。
③ 指摘とセットではなく、独立して行う
「よかったけど、ここはダメ」
という伝え方は逆効果。肯定は肯定として一度分けて伝える方が伝わりやすいです。
まとめ|肯定的フィードバックは“行動を育てる支援技術”
肯定的フィードバックは、支援現場で明日から使える実践的な技術です。
褒めるのではなく、行動を“具体的に返す”ことで、利用者の成長と主体性を育てていきます。
支援関係を良くしたい、行動を育てたい、チームの支援の質を上げたい──
そんな場面で大きな力を発揮します。

あなたの現場にも、肯定的な言葉の循環が広がるはずです。




