
「福祉だから、品質や納期が多少遅れても仕方ない」 「工賃が低いのは、今の仕事内容では変えられない」
そんな悩みを持つ施設管理者やサービス管理責任者の方は少なくありません。しかし、今求められているのは「福祉という枠組み」を言い訳にせず、一つの事業体として利益を出し、利用者に還元する視点です。
本記事では、B型事業所が平均工賃3万円を達成するために必要な「売れるモノづくり」と「稼げる仕組みづくり」の具体策を解説します。
1. 「福祉」を言い訳にしない。平均工賃3万円を達成する5つの戦略
工賃向上に成功している事業所に共通しているのは、職員が「支援員」であると同時に「経営者・営業マン」としての視点を持っていることです。
① 「応援消費」から「実力消費」への転換
「障害者が作ったから買う」という動機は、一過性の支援で終わりがちです。リピーターを生むためには、「デザインが良い」「味が抜群」「使い勝手が良い」という、商品そのものの価値で選ばれる必要があります。
② 自主事業と請負作業のベストミックス
単価の低い内職(下請け)だけに頼っていては、工賃の限界がすぐにやってきます。利益率の高い「自主製品」を柱にしつつ、安定稼働のための「高単価な施設外就労・請負」を組み合わせるポートフォリオを組みましょう。
③ コストの可視化と適正価格の交渉
「人件費(職員の指導料)」や「光熱費」を計算に入れず、安すぎる価格で受注していませんか?作業工程を時間換算し、適正な見積もりを作成することで、パートナー企業との対等な交渉が可能になります。
④ 営業チャネルの多角化(EC・ふるさと納税)
地域のバザーだけでなく、AmazonやBASEといったECサイト、自治体のふるさと納税返礼品への登録を進めましょう。市場を全国に広げることで、在庫回転率が劇的に向上します。
⑤ 設備投資による生産性の向上
手作業にこだわりすぎず、業務用の機械(シーラー、大型オーブン、専用治具など)を導入しましょう。初期投資はかかりますが、生産スピードと品質の安定は、結果として高い工賃に直結します。
2. 利用者の強みを最大化する「工程の細分化」とマニュアル化
「ミスが多い」「特定の利用者しかできない」という課題は、個人の能力ではなく「仕組み(マニュアル)」で解決できます。
VOP(視覚的指示書)の導入
文字だけのマニュアルではなく、写真やイラストを多用した「見てわかる」手順書を作成します。
- 色の活用: 「赤いカゴは検品前、青いカゴは検品後」など、直感的に判断できるルール作り。
- 治具(じぐ)の活用: 物差しを使わずに一定の長さで切れるガイドや、シールを貼る位置を固定する型紙を用意します。
「できない」を「できる」に変える工程分解
一つの大きな作業を、10や20の小さな工程に分解します。
- 複雑な組み立ては無理でも、「袋にシールを貼るだけ」「部品を数えるだけ」なら、集中して取り組める利用者が必ずいます。利用者の特性に作業を合わせるのが、職業指導員の腕の見せ所です。
3. 地域の「パートナー」として選ばれるための営業・広報戦略
企業から仕事をもらう際、「助けてください」という姿勢では単価を叩かれます。目指すべきは、企業の課題を解決する「ビジネスパートナー」です。
提案型営業のススメ
- Before: 「何か仕事はありませんか?」
- After: 「貴社の検品工程を弊社で請け負うことで、貴社社員の残業時間を月20時間削減し、コストを15%カットできます」
このように、相手企業のメリットを数値で提示することが信頼に繋がります。
「生産の裏側」を伝える広報
SNSやブログでは、完成品だけでなく、「利用者がどれほど真剣に、丁寧な工程を経て作っているか」を発信しましょう。清潔な作業場、厳格な検品体制を公開することで、品質に対する安心感を醸成できます。
まとめ:工賃向上は「利用者の尊厳」を守ること
平均工賃の向上は、単なる数字の達成ではありません。自分が関わった商品が売れ、十分な対価を得ることは、利用者の「社会に必要とされている」という自信(自己肯定感)に直結します。
「福祉だから」という壁を取り払い、プロのモノづくりに挑戦してみませんか?




