
障害者施設における身体拘束とは、利用者の安全を守ることを目的に、一時的に身体の自由を制限する行為を指します。
転倒防止や自傷行為の防止など、やむを得ない場合に限定して行われますが、人権侵害に繋がる恐れがあるため、慎重な判断と明確な根拠が必要です。
身体拘束の定義
身体拘束とは、次のような行為を指します。
- ベッドや椅子にベルトなどで固定する
- ミトン(手袋型の拘束具)を使用する
- 扉の施錠などで移動を制限する
これらの行為は、本人の意思に反して身体の自由を制限するため、原則として禁止されています。
身体拘束が認められる例外(3原則)
障害者総合支援法や厚生労働省のガイドラインでは、身体拘束は原則禁止とされています。
ただし、次の3つの条件をすべて満たす場合のみ、例外的に認められます。
① 切迫性
利用者や他者に生命・身体への危険が迫っている場合。
② 非代替性
他に適切な方法がなく、身体拘束以外では安全を確保できない場合。
③ 一時性
拘束は必要最小限の時間・範囲にとどめ、状況が改善すればすぐ解除すること。
身体拘束を行う際の手続き
身体拘束を行う場合は、次の手順を踏む必要があります。
- チームでの協議・記録
利用者の状態や他の対応策を検討し、記録に残します。 - 本人・家族への説明と同意
なぜ必要なのか、どのような方法かを丁寧に説明します。 - 拘束中の観察と記録
身体・精神的影響を常に確認し、解除のタイミングを見極めます。 - 事後の検証
拘束が本当に必要だったのか、再発防止策を検討します。
身体拘束を減らすための取り組み
障害者施設では、以下のような身体拘束ゼロに向けた取り組みが求められます。
- 職員の倫理教育や研修の実施
- 個別支援計画の見直し
- 環境調整(危険の少ないレイアウト・福祉用具の活用)
- 利用者の心理的安定を促す支援(声かけ・関わり方の工夫)
身体拘束がもたらす影響
身体拘束は、一時的に安全を確保できる場合もありますが、次のような心身への悪影響を及ぼすリスクがあります。
- 身体機能の低下(筋力低下・褥瘡など)
- 不安・抑うつ・PTSDの発症
- 職員と利用者の信頼関係の悪化
そのため、最終手段として慎重に行うことが重要です。
まとめ:尊厳を守る支援を目指して
障害者施設での身体拘束は、利用者の命を守るために行われる場合もありますが、人権に深く関わる重大な行為です。
職員一人ひとりが倫理的視点を持ち、「なぜ拘束が必要なのか」「他に方法はないか」を常に問い続けることが求められます。

おのぴの
利用者の尊厳と安全の両立を目指すことこそ、福祉支援の本質です。


