
「障がい者就労支援」と聞くと、まず「工賃(給料)をいかに上げるか」という議論が先行しがちです。もちろん、経済的な自立は大切です。
しかし、現場で日々生まれている本当の価値は、数字だけで測れるものでしょうか?
実は、就労支援の現場には、「働くこと=社会と繋がること」という、人生の土台となる「居場所」としての価値が眠っています。今回は、工賃の先にある、就労支援が果たす真の役割について深掘りします。
1. 「工賃アップ」だけが正解ではない理由
多くの就労継続支援B型事業所などで目標とされる「工賃向上」。しかし、高い工賃を追求するあまり、利用者が過度なプレッシャーを感じてしまい、体調を崩してしまっては本末転倒です。
経済的報酬と「心の報酬」
働くことには、2つの報酬があると言われています。
- 経済的報酬: お金(工賃・給料)
- 心理的報酬: 「ありがとう」と言われる、誰かの役に立つ、仲間がいる
特に就労支援の場においては、後者の「心理的報酬」が、その人の自己肯定感を高め、次の一歩を踏み出すエネルギーになります。
2. 就労支援が生み出す「サードプレイス(第3の居場所)」
現代社会において、家庭でも職場(一般就労)でもない、自分をありのままに受け入れてくれる「第3の居場所」の存在が注目されています。
孤立を防ぐ「繋がり」のセーフティネット
障がいや特性により社会から孤立しがちな方にとって、事業所は単に作業をする場所ではありません。
- 「おはよう」と言い合える関係: 社会的な孤立を防ぐ。
- 役割がある喜び: 「自分がいなくても困らない世界」から「自分がいないと困る世界」へ。
- 失敗が許される環境: 失敗しても見捨てられないという安心感が、挑戦する心を育てます。
3. 「働く」を再定義する:社会との接点としての作業
「箱折り」や「清掃」「カフェ運営」といった日々の作業。これらは単なるタスクではなく、社会と繋がるためのインターフェース(接点)です。
自分の仕事が「誰か」に届くということ
例えば、丁寧に作ったお菓子がお客様に「美味しい」と言われる。その瞬間、利用者は「支援される側」から「価値を提供する側」へと変わります。
「働くことは、傍(はた)を楽(らく)にすること」
この言葉の通り、自分の存在が周囲の役に立っているという実感こそが、何物にも代えがたい「居場所」の証明になります。
4. これからの就労支援に求められる視点
これからの福祉・就労支援に必要なのは、工賃の額を競うことだけではなく、「その場所があることで、どれだけ人生が豊かになったか」という視点です。
企業や地域を巻き込む
事業所内だけで完結せず、地域社会や一般企業と繋がっていくことも重要です。
- 地域のイベントへの参加
- 企業からの業務委託を通じた交流
- SNSでの発信によるファンづくり
多角的な繋がりを持つことで、事業所はより強固な「居場所」へと進化していきます。
まとめ:繋がりこそが、自立への最短距離
「働くこと」の目的は、お金を稼ぐことだけではありません。 人との繋がり、社会の中の役割、そして「ここにいていいんだ」という安心感。
就労支援が生み出す「居場所」の価値を再認識することで、利用者一人ひとりの可能性はもっと自由に、もっと豊かに広がっていくはずです。




