障害者施設でのICF(国際生活機能分類)の使いこなしかた|他職種に伝わるアセスメントの書き方と具体例

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1. ICF(国際生活機能分類)が「ただの専門用語」になっていませんか?

障害者施設(生活介護、就労継続支援、施設入所など)のアセスメントや個別支援計画書を作成する際、必ず登場する「ICF(国際生活機能分類)」。

研修などで一度は図を見たことがあっても、日々の多忙な実務の中で、以下のような悩みを抱えていないでしょうか。

  • 「ICFの各項目(心身機能、活動、参加など)に、何をどう分類して書けばいいのか分からない」
  • 「結局、利用者の『できないこと(課題)』ばかりを羅列した書類になってしまう」
  • 「外部の相談支援専門員や医療職(医師・PT等)に対して、本人の状態を専門的かつ客観的に伝える文章が書けない」

ICFは、単なる分類のための学術用語ではありません。利用者の「生きづらさの背景」を多角的に分析し、他職種と一発で共通認識を持つための「最強の共通言語」です。

この記事では、ICFの思考プロセスを現場レベルに噛み砕き、明日からの書類作成が劇的に変わるアセスメントの書き方を解説します。

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2. なぜ他職種連携には「ICFの視点」が必要なのか?

従来の医療モデル(ICIDH:国際障害分類)では、「病気や障害があるから、これができない」という【マイナス面(欠点)】に着目しがちでした。しかし、ICFは「人が生きるための全体像(生活機能)」をプラスの視点も含めて捉えます。

他職種(特に医療・リハビリ職)と連携する上でICFが重要になる理由は以下の3点です。

① 「障害」を個人の問題ではなく「環境との関係性」で捉える

例えば、「車椅子移動の利用者が、地域生活に『参加』できない」という課題があったとします。原因を「足が動かないから(心身機能の障害)」とだけ捉えると、福祉の支援はストップしてしまいます。

しかし、ICFの視点では「建物にスロープがない(環境因子)」ことが原因だと捉えます。つまり、「環境調整」によって本人の「活動」や「参加」を広げられるという、福祉のプロとしての具体的なアプローチ(仮説)を立てる根拠になるのです。

② 本人の「強み(ストレングス)」を可視化できる

ICFは「できること(背景にある強み)」にもスポットを当てます。「言葉が出ない(心身機能)」という特性があっても、「文字カードの理解は早い(個人因子)」「周囲に助けを求める人柄の良さがある(個人因子)」といったプラスのデータを拾い上げることで、より現実的で本人に負担の少ない支援計画が作成できます。

③ 医療職や相談職と「一発で伝わる共通言語」になる

感覚的な「最近なんだか不穏です」という報告は、多職種には伝わりません。「【環境因子】である騒音の変化により、【心身機能】の聴覚過敏が刺激され、【活動】である作業の集中が10分持たなくなっている」というように、ICFのフレームに沿って客観的事実を言語化することで、医師やケアマネジャーも即座に本質を理解し、適切なアドバイスや連携が取れるようになります。

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3. ICFの構成要素と現場での書き方のポイント

アセスメントに落とし込むための、ICFの主要5因子の書き方のポイントです。

【健康状態】 病名、合併症、睡眠、肥満度など
    
【心身機能・身体構造】 障害特性(ASD・ADHD)、肢体不自由、視覚・聴覚過敏、認知能力など
    
【活 動】 日常生活動作(ADL)、作業スピード、コミュニケーション動作など
    
【参 加】 施設での役割、地域活動、就労、家族内での役割など
    
【環境因子】 物理的環境(段差、パーテーション)、人的環境(職員の声掛け、家族)、制度
    
【個人因子】 年齢、性別、ライフスタイル、本人の価値観、強み(ストレングス)、こだわり

4. 【具体例】他職種に伝わるアセスメント文例(リフレーミング)

よくある「NGな書き方(主観的・マイナス視点)」を、ICFに基づいた「プロの専門的な書き方(客観的・多角的視点)」へリフレーミングした文例です。会議や書類作成の参考にしてください。

【事例】自閉スペクトラム症(ASD)があり、作業中に離席・パニックを起こすAさんの場合

× 避けるべき書き方(主観的・課題のみ)◯ ICFを意識した専門的な書き方(事実・環境分析・強み)
【アセスメント文例】
自閉症の特性のせいか、作業中に突然怒り出して席を立つ。本人のワガママや気分のムラも見られるため、職員が側で注意して見守る必要がある。
【健康状態・心身機能】
ASDの診断あり。感覚過敏(特に突発的な高音に対する聴覚過敏)が見られる。
【活動・参加】
手順が決まった軽作業には30分以上集中できる強み(活動)があるが、周囲の話し声が大きくなると離席(活動)につながりやすい。
【環境因子】
現在の作業スペースは他利用者との距離が近く、パーテーション等の遮音環境(環境因子)が不足している。
【個人因子・今後の方向性】
文字の視覚的理解が非常に高い(個人因子)。今後は、個室ブースへの席変更(環境因子)を行い、休憩のタイミングをカードで提示(環境因子)する仮説検証を行う。

5. まとめ:ICFはチームの心理的安全性と合意形成を支える

ICFを使ってアセスメントを書く最大のメリットは、職員個人の「ダメ出し」や「答え探し」の迷子から脱却できる点にあります。

利用者のトラブルや支援の失敗を「本人の障害のせい」にしたり、「支援員のスキル不足」のせいにしたりする減点方式の現場では、正しいアセスメントは育ちません。

ICFという眼鏡をかけることで、「今回は環境因子(私たちの関わり方や設備)のどこに課題があっただろう?」「本人のどの個人因子(強み)を掛け合わせたら解決できるだろう?」と、チーム全体で前向きに仮説を立て、実験し、モニタリングしていく建設的な合意形成ができるようになります。

この客観的で温かい視点こそが、現場の心理的安全性を高め、結果として医療や外部機関からも「この施設は非常に専門的な視点で本人を捉えている」という深い信頼の獲得に繋がります。

完璧な書類を一文字目から書こうとする必要はありません。まずは今日の日誌で、1人の利用者様の行動を「環境因子」と結びつけて1行書き留めることから、プロのアセスメントを始めてみませんか?

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