
障害者施設で働く職員にとって、「意思決定支援」は日々の業務の核心とも言える重要なテーマです。しかし、実際にどうアセスメント(状況把握・評価)を進めればよいのか悩む方も少なくありません。
本記事では、厚生労働省の指針に基づいた意思決定支援におけるアセスメントの考え方と実践のポイントを解説します。
意思決定支援における「アセスメント」とは?
従来の障害福祉におけるアセスメントは、「何ができないか(課題)」を見つける側面が強かったと言えます。しかし、意思決定支援におけるアセスメントは、「本人がどう生きたいか、何を大切にしているか」を理解するためのプロセスです。
なぜアセスメントが必要なのか
本人の意向を正しく汲み取らずに支援を行うと、それは「良かれと思った押し付け(パターナリズム)」になりかねません。本人の特性やコミュニケーション手段を深く知ることで、初めて「本心」に近づくことができます。
意思決定支援アセスメントの3つの柱
アセスメントを行う際は、以下の3つの視点をバランスよく整理することが重要です。
1. 本人の「意思形成」の状況
本人が自分で物事を選んだり、考えをまとめたりするために必要な情報を整理します。
- 理解力・判断力: どのような説明であれば理解しやすいか(視覚情報、短い言葉など)。
- 経験値: 過去に自分で選んだ経験があるか。経験不足により「選べない」状態になっていないか。
2. 本人の「意思表明」の手段
本人がどのようにして自分の気持ちを伝えているかを分析します。
- 言語的コミュニケーション: 言葉による意思表示。
- 非言語的コミュニケーション: 表情、視線、しぐさ、拒否反応、行動障害など。
- 補助手段: VOD(音声出力装置)や絵カードの使用状況。
3. 本人の「価値観・生活史」の把握
現在の希望だけでなく、その背景にある「その人らしさ」を掘り下げます。
- 大切にしていること: 譲れないこだわりや、心地よいと感じる環境。
- これまでの歩み: 幼少期から現在に至るまでの経験や、家族との関係性。
実践!アセスメントシート作成のポイント
記事や記録に残す際、以下のポイントを意識すると、チーム内での共有がスムーズになります。
| 項目 | 具体的なチェック内容 |
| 選好(好き嫌い) | 好きな食べ物、嫌いな音、落ち着く場所など |
| 意思決定の癖 | 人の顔色を伺う傾向があるか、即答するタイプか |
| 環境要因 | 誰がそばにいると話しやすいか、静かな場所が必要か |
| 最善の利益 | 本人の意向が不明確な場合、何が本人の幸せに繋がるか |
注意すべき「意思決定支援」の落とし穴
アセスメントを進める中で、職員が陥りやすい注意点があります。
- 「できない」を理由に諦めない:重度の知的障害や精神障害があるからといって、「意思がない」と決めつけてはいけません。微細な変化を読み取ることがアセスメントの真髄です。
- 代理決定と混同しない:家族や職員が「本人のため」に決めるのは最終手段です。まずは「本人が決めるためのプロセス」をどれだけ積み上げたかを重視しましょう。
- 時間の経過による変化を受け入れる:人の気持ちは揺れ動くものです。「一度決めたから」と固定せず、継続的にアセスメントを更新していく姿勢が求められます。
まとめ:アセスメントは「本人を知る旅」
意思決定支援のアセスメントに「正解」はありません。しかし、本人のわずかなサインを見逃さず、背景にある想いを想像し続けることで、支援の質は劇的に向上します。
障害者施設職員として、本人の「自分らしい人生」を支えるパートナーであるために、まずは丁寧なアセスメントから始めてみませんか?

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