
福祉現場の最前線で働く職員の皆さまにとって、「成年後見制度」と「意思決定支援」の両立は非常に難しい課題ですよね。
「本人のため」を思っての行動が、実は本人の意思を置き去りにしていないか?そんな葛藤を抱える方も多いはずです。この記事では、明日からの支援に役立つ考え方を分かりやすく解説します。
障害者施設職員が知っておくべき「意思決定支援」の基本と成年後見制度の役割
障害福祉の現場では、利用者の権利を守るための「意思決定支援」がこれまで以上に重視されています。2024年度の障害福祉サービス等報酬改定でも、意思決定支援のガイドライン遵守が義務化されるなど、もはや避けては通れないテーマです。
1. 成年後見制度と意思決定支援の「ズレ」を解消する
かつての成年後見制度は、財産管理などの「代行決定(本人の代わりに決めること)」に重きが置かれていました。しかし、現在の国際的な流れ(障害者権利条約など)では、「意思決定支援(本人の意思を尊重し、自分で決められるよう支えること)」が最優先とされています。
- 代行決定: 本人の最善の利益を考え、周囲が判断する
- 意思決定支援: 本人の「こうしたい」を汲み取り、実現のために必要な情報を伝え、選べる環境を整える
2. 「本人の意思」を最大限に尊重するための3ステップ
現場で迷ったときは、以下のステップで支援を組み立ててみましょう。
| ステップ | 内容 | 職員の具体的なアクション |
| ① 表明された意思の把握 | 言葉やサインで示された意思を確認 | 「やりたい」「嫌だ」という直接的な表現を逃さない |
| ② 推定意思の探索 | 表明が難しい場合、過去の好みや価値観から推測 | 「昔はこれが好きだったから、今もこう思うのではないか?」をチームで共有 |
| ③ 最善の利益の検討 | 意思が不明な場合、本人の心身の状況を鑑みて判断 | 最後の手段として、本人が不利益を被らない選択肢を多職種で検討 |
現場で実践!意思決定支援を深める5つのポイント
① 「できない」と決めつけない(能力の推認)
知的障害や精神障害があるからといって、「判断能力がない」と一括りにするのは危険です。「何を」「どの範囲で」なら判断できるのかを見極めることがスタートです。
② 情報提供の工夫
難しい言葉で説明して「分からないからお任せします」と言わせてはいませんか?
- 写真や絵カードを使う
- 実際に体験(見学)してみる
- メリット・デメリットを簡潔に伝える
③ 「揺れる意思」を許容する
私たちの気持ちが毎日変わるように、利用者の意思も揺れ動きます。昨日と今日で答えが違っても、それを「わがまま」と切り捨てず、その時々の感情に寄り添うことが大切です。
④ チームアプローチと記録
一人の職員の思い込みを防ぐため、ケース会議(サービス担当者会議)での検討が不可欠です。成年後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士等)とも密に連携し、「なぜこの結論に至ったか」のプロセスを記録に残しましょう。
⑤ 失敗する権利を尊重する
過保護になりすぎ、失敗を先回りして防いでいませんか?命に関わるような危険がない限り、「あえて失敗を経験し、そこから学ぶ」プロセスも意思決定支援の一部です。
成年後見人と施設職員の連携のコツ
成年後見人は「法的な代理人」ですが、日常の様子を一番知っているのは「施設職員」です。
ポイント:
後見人に「本人は日常的にこのような表情を見せています」「これが好きだと言っています」という生活実態(意思の断片)を具体的に伝えましょう。これにより、後見人もより本人らしい判断(事務)が可能になります。
まとめ:意思決定支援は「答え」ではなく「プロセス」
意思決定支援に「これさえやれば正解」というゴールはありません。大切なのは、本人の声なき声に耳を傾け続ける姿勢そのものです。
成年後見制度を「制限」のための道具ではなく、本人の「自分らしい選択」を法的に支えるためのツールとして活用できるよう、私たち支援者が橋渡し役となっていきましょう。




