
障害者福祉の現場で働いていると、「何を考えているのかわからない」「どうしてほしいのか見当がつかない」という場面に必ず直面します。
特に言語によるコミュニケーションが難しい方の場合、「自分のケアは間違っていないか?」と不安になることもあるでしょう。
この記事では、現場で迷ったときの「判断の道しるべ」として、具体的な視点とアクションを解説します。
1. なぜ「意思がわからない」と悩んでしまうのか?
現場職員が「意思がわからない」と悩むのは、あなたが利用者の尊厳を大切にしようとしている証拠です。
まずは、以下の3つの「壁」があることを理解しましょう。
- 表出の壁: 発語や身振りが制限されている。
- 解釈の壁: 職員側の経験値や先入観で判断してしまう。
- 状況の壁: その日の体調や環境によって意思が変化する。
2. 迷ったときの5つの判断指針(道しるべ)
「どうすればいい?」と迷ったときは、次のステップで多角的にアプローチしてみましょう。
① 「快・不快」のサインを読み解く
複雑な意思を読み取ろうとする前に、まずは生命の基本である「快(心地よい)」か「不快(嫌だ)」かに注目します。
- 表情のわずかな弛緩、瞳孔の開き、筋緊張の度合い。
- 呼吸のリズム(浅いか、深いか)。 これらは嘘をつけない身体の声です。
② 「いつもとの違い」をデータで見る
意思がわからないときは、過去の記録(ケース記録)にヒントが隠されています。
- 「前回同じことが起きたときはどう対応したか?」
- 「その時の前後の行動は?」 個人の経験だけでなく、チームで共有されている客観的な事実を道しるべにします。
③ 環境をひとつずつ変えてみる(消去法)
本人の内側がわからなければ、外側を変えて反応を見ます。
- 室温を変える、照明を落とす、騒音を遮断する。
- 介助者の立ち位置を左右入れ替えてみる。 反応に変化があれば、それが「意思の片鱗」です。
④ 「もし自分だったら」という視点を持つ
迷ったとき、最終的な判断基準になるのが「普通、これって嫌じゃないかな?」という一般普遍的な感覚です。 「障害があるから特別」と考える前に、一人の人間として、その状況に置かれたときにどう感じるかを想像します。これを「合理的配慮」の原点と呼びます。
⑤ 「保留」するという選択肢を持つ
どうしても答えが出ないとき、無理に「これが本人の意思だ」と決めつけないことも大切です。 「今はわからない」と認め、観察を続けることも立派な支援のひとつです。
3. チームで「意思決定支援」を行うためのポイント
一人の職員が抱え込むと、それは「憶測」になりがちです。
- カンファレンスの活用: 「私はこう見えた」「自分はこう感じた」という複数の視点を出し合う。
- ご家族へのヒアリング: 幼少期のクセや、家庭での反応を聞くことで、パズルのピースが埋まることがあります。
4. まとめ:答えは利用者の中にある
障害者福祉における「意思決定支援」に、100点満点の正解はありません。
大切なのは、「あなたのことを知りたい」という姿勢を持ち続けることです。迷ったときは、一度深呼吸して、今回紹介した5つの指針を思い出してください。
現場で使えるチェックリスト
- [ ] 身体に緊張はないか?(快・不快の確認)
- [ ] 記録に類似のケースはないか?
- [ ] 環境調整は試したか?
- [ ] チームに相談したか?





