
~「同じ支援」ではうまくいかない理由~
意思決定支援は「本人の意思を尊重する支援」として、障害福祉の現場でますます重要視されています。
しかし、知的障害と自閉スペクトラム症(ASD)では、意思形成のプロセスや困難さが大きく異なります。
本記事では、
- 知的障害のある方への意思決定支援
- 自閉スペクトラム症のある方への意思決定支援
を特性別に整理し、現場で使える具体的な工夫を解説します。
意思決定支援における基本的な考え方
障害特性によって「困りごと」は違う
意思決定が難しくなる理由は人それぞれですが、
- 理解の難しさ
- 想像力の特性
- 感覚や不安の影響
などは、障害特性と深く関係しています。
そのため、
「意思決定が苦手だから代わりに決める」ではなく、「決められる形に支援を調整する」
という視点が重要です。
知的障害のある方への意思決定支援の工夫
知的障害の特性と意思決定の課題
知的障害のある方は、以下のような点で意思決定が難しくなることがあります。
- 抽象的な説明の理解が難しい
- 選択肢が多いと混乱しやすい
- 将来を見通して考えることが苦手
その結果、
「よく分からないから“どっちでもいい”と言う」
「周囲の意見に流されてしまう」
といった状態が起こりやすくなります。
知的障害のある方への具体的支援の工夫
① 選択肢は「少なく・具体的に」
- 2択から始める
- 実物・写真・イラストを使う
- 言葉だけで説明しない
例:
×「今日の余暇、何したい?」
〇「散歩」と「DVDを見る」、どっちにする?
② 体験を通じて選べるようにする
- 一度やってみる
- 短時間の体験を用意する
体験は「理解を助ける最強の材料」です。
③ 気持ちを代弁しすぎない
- 「本当は〇〇が好きだよね」と決めつけない
- 表情・行動・反応を丁寧に観察する
自閉スペクトラム症(ASD)のある方への意思決定支援の工夫
ASDの特性と意思決定の課題
ASDのある方は、知的な理解力が高くても、以下のような困難を抱えることがあります。
- 変化への強い不安
- 曖昧な表現が理解しにくい
- 感覚過敏・感覚鈍麻の影響
そのため、
「選択肢が多いこと」
「先が見えないこと」
が意思決定の大きなストレスになります。
ASDのある方への具体的支援の工夫
① 見通しを明確に示す
- スケジュールを事前に提示
- 変更点は早めに伝える
例:
「このあと①入浴 → ②夕食 → ③自由時間」
② 曖昧な言葉を使わない
- 「あとで」「適当に」「少し」などを避ける
- 数字や具体的表現を使う
例:
×「あとで出かける」
〇「15時に出発して、30分歩く」
③ 選択肢の違いを構造化する
- 表やカードで違いを見える化
- メリット・デメリットを整理
ASDのある方は、論理的な整理があると選びやすくなるケースが多いです。
知的障害・ASDに共通する重要ポイント
「決めない」という選択も尊重する
意思決定支援では、
- すぐに決められない
- 今は選びたくない
という状態も、本人の意思の一部です。
無理に結論を出させることが、
かえって不安や行動障害につながる場合もあります。
支援者の「正解探し」が支援を歪めることも
- 失敗させないために先回りしすぎる
- 支援者が安心する選択に誘導する
こうした関わりは、
意思決定支援が「管理」や「誘導」に変わってしまうリスクがあります。
まとめ|特性理解が意思決定支援の質を高める
- 知的障害:具体化・体験・選択肢の整理
- ASD:見通し・構造化・不安への配慮
意思決定支援に「万能な方法」はありません。
大切なのは、
障害名ではなく、その人の特性に合わせて支援を調整することです。
日々の小さな選択の積み重ねが、
本人の「自分で決める力」を少しずつ育てていきます。




