
ケース会議が「話したけれど結論が残らない」「人によって受け取り方が違う」場になってしまう原因の多くは、進行の型が共有されていないことにあります。
特に意思決定支援をテーマにしたケース会議では、感覚論や個人の経験談に流れやすく、支援の共通化につながらないことも少なくありません。
この記事では、現場ですぐ使える進行用アジェンダ例をもとに、意思決定支援をチームでそろえるためのケース会議の進め方を解説します。
なぜケース会議に「進行アジェンダ」が必要なのか
ケース会議は自由に意見を出し合う場である一方、枠組みがないと次のような状態に陥りがちです。
- 発言者が固定され、現場の声が拾われない
- 問題点の指摘で終わり、次の支援に活かせない
- 意思決定支援が「できている・できていない」の評価論になる
進行アジェンダは会議を縛るためのものではなく、本人の意思を中心に話を組み立てるためのガイドラインです。
ケース会議で使える基本アジェンダ例
以下は、意思決定支援をテーマにしたケース会議で汎用的に使える構成です。30〜60分の会議を想定しています。
① 会議の目的とゴールの共有(5分)
最初に必ず確認したいのが「今日は何をそろえたいのか」です。
- 特定の場面での意思決定支援を整理する
- 支援者間の関わり方のズレを調整する
- 今後の支援の軸を決める
目的を明確にすることで、議論が拡散するのを防げます。
② 本人の意思・行動の事実確認(10分)
ここでは評価や解釈を入れず、事実ベースの情報を共有します。
- どの場面で、どんな選択肢を提示したか
- 本人はどのような反応を示したか
- 言語・非言語のサイン(表情、指差し、拒否行動など)
「〜だと思う」ではなく「〜があった」という表現を意識すると、認識のズレが減ります。
③ 支援者の関わりと判断ポイントの整理(10分)
同じ場面でも、支援者によって判断のポイントは異なります。
- なぜそのタイミングで介入したのか
- どこまで本人に任せたのか
- 安全配慮をどう考えたのか
個人を評価するのではなく、判断の根拠を共有する時間と位置づけます。
④ 課題の整理と視点のすり合わせ(10分)
ここでは「うまくいかなかった点」だけでなく、
- うまくいった支援
- 本人の力が発揮された場面
にも注目します。
意思決定支援は不足探しではなく、活かせる強みをどう広げるかが重要です。
⑤ 今後の支援方針の合意(10分)
会議の中で最も重要なパートです。
- 次回、同じ場面ではどう関わるか
- 選択肢の数・提示方法・言葉がけ
- 判断に迷った場合の対応
「全員が同じ対応をする」ことよりも、判断の軸を共有することを目標にします。
⑥ 記録と共有方法の確認(5分)
最後に、会議内容をどう残し、どう現場に返すかを確認します。
- 支援記録への反映方法
- 申し送りで伝えるポイント
- 欠席者への共有方法
ここを省略すると、せっかくの合意が現場に根づきません。
アジェンダ運用を成功させる3つのコツ
話し合いを「評価」から「理解」に切り替える
ケース会議が重くなる原因は、正解探しや責任追及です。進行役は常に、
なぜそう判断したのか
に立ち返ることで、建設的な対話を保てます。
進行役は結論を急がない
沈黙や意見の違いは、現場のリアルなズレの表れです。すぐにまとめず、言語化されていない前提を引き出すことが、共通理解につながります。
アジェンダは「たたき台」でよい
完璧な進行表を目指す必要はありません。現場に合わせて順番を入れ替えたり、時間配分を変えたりしながら、使い続けることが共通化への近道です。
ケース会議の質は、意思決定支援の質に直結する
進行アジェンダがあるだけで、ケース会議は「話す場」から「支援をそろえる場」に変わります。
意思決定支援は個人のスキルではなく、チームで支える仕組みです。アジェンダを活用し、利用者本人の意思を中心に据えたケース会議を積み重ねていきましょう。




