
障害者施設で働いていると、パニックや自傷、他害、こだわりといった「行動障害」に直面し、どう対応すべきか悩む場面も少なくありません。
「なぜこんなことをするの?」「どうすれば落ち着いてくれるの?」と、支援員自身が疲弊してしまうこともあります。しかし、行動障害は本人からの「目に見えるメッセージ」です。
この記事では、行動障害を正しく理解するための視点と、現場ですぐに実践できる関わりの工夫を解説します。
1. 行動障害とは?「困った人」ではなく「困っている人」
まず大切な視点は、行動障害を起こしている本人は「周囲を困らせようとしている」のではなく、「本人が一番困っている」ということです。
行動障害は、周囲の環境や関わり方との「ミスマッチ」によって生じます。
行動障害が起こる主な背景
- コミュニケーションの難しさ: 自分の気持ちを言葉で伝えられない。
- 感覚の過敏さ: 特定の音や光、肌触りが苦痛で耐えられない。
- 見通しの持てなさ: 「次に何が起こるか」が分からず、強い不安を感じる。
- 体調不良: 痛みや不快感を適切に伝えられない。
2. 氷山モデルで考える「行動の理由」
行動障害の理解に役立つのが「氷山モデル」という考え方です。
表面に見えている「叩く」「叫ぶ」といった行動は、氷山の一角に過ぎません。水面下には、その行動を引き起こした「原因(背景)」が隠れています。
支援員の役割は、表面的な行動を力ずくで抑えることではなく、水面下にある原因を見つけ、それを取り除くことにあります。
3. 具体的な関わりの工夫:3つのステップ
現場ですぐに取り組める、環境調整と関わりのポイントを紹介します。
① 環境を整える(構造化)
「いつ、どこで、何を、いつまで」を視覚的に分かりやすく伝えます。
- スケジュールの視覚化: 文字や写真、イラストを使って、一日の流れを提示する。
- 場所の明確化: 「ご飯を食べる場所」「休憩する場所」をパーテーションなどで分ける。
② コミュニケーションをシンプルにする
言葉での指示は、本人の混乱を招くことがあります。
- 短い言葉で伝える: 「~しないで」ではなく「~します」と肯定形で短く伝える。
- 視覚提示の活用: 絵カードや写真を見せながら話す。
③ 成功体験を積み重ねる
行動障害が出なかった時、あるいは小さな適切な行動ができた時に、即座に肯定的なフィードバックを行います。
- 「褒める」より「認める」: 「静かに待てたね」「片付けられたね」と事実を伝える。
4. パニックが起きてしまった時の対応
どんなに工夫しても、パニックが起きてしまうことはあります。その際の鉄則は「安全確保」と「刺激の低減」です。
- 落ち着くまで見守る: 叱ったり、説得したりするのは逆効果です。
- 刺激を減らす: 周囲の人を遠ざける、照明を落とす、静かな場所に誘導する。
- 二次的な被害を防ぐ: 自傷や他害がある場合は、クッションを使うなどして怪我を防ぐ。
5. まとめ:チームで取り組むことの大切さ
行動障害への対応は、一人の職員が抱え込むものではありません。
- 記録の共有: 「どんな時に起きたか(前兆)」「どう対応したら落ち着いたか」をチームで分析する(ABC分析)。
- 一貫した対応: 職員によって対応がバラバラだと、利用者は混乱します。
本人の「生きづらさ」を理解しようとする姿勢こそが、最良の支援への第一歩です。日々の関わりの中で、小さな変化を見逃さず、本人にとって心地よい環境を共に作っていきましょう。




