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障害者施設で働く OT(作業療法士)・PT(理学療法士)・MT(音楽療法士) の仕事は、病院よりも生活支援・社会参加支援に近い形で行われます。施設の種類(生活介護、就労支援、入所施設など)によって少しずつ役割が変わりますが、共通するポイントを整理しました。
OT(作業療法士)の仕事
作業療法士(Occupational Therapist)
日常生活動作(ADL)の維持・向上
→ 食事、着替え、トイレ、入浴、移動の練習や動作分析
作業活動(レクリエーションや手工芸)を通じた心身機能の維持
→ 集中力や手先の巧緻性を高める
福祉用具や環境設定の提案
→ 手すりの位置、車いす、スプーン、食器など
社会参加のサポート
→ 外出練習、余暇活動、就労前トレーニング
ポイント
生活全般を「作業」ととらえ、その人が自分らしい生活を送れるように支援します。
PT(理学療法士)の仕事
理学療法士(Physical Therapist)
身体機能の維持・改善
→ 筋力訓練、関節可動域訓練、ストレッチ、歩行練習
姿勢・移動の安定化
→ 車いすや歩行器の調整、ポジショニング
二次障害予防
→ 褥瘡予防、関節拘縮の防止、転倒予防
運動プログラムの作成
→ 施設全体の体操、個別リハビリ計画
ポイント
「動ける身体を維持する」ことが中心。日中活動に参加できる体力づくりも担当します。
MT(音楽療法士)の仕事
音楽療法士(Music Therapist)
音楽を使った情緒安定・自己表現の支援
→ 歌唱、楽器演奏、リズム運動
コミュニケーションの促進
→ 集団セッションで交流を促す
認知機能・記憶の刺激
→ 懐かしい曲で回想、歌詞当てクイズ
QOL(生活の質)向上
→ ストレス発散、楽しみの時間づくり
ポイント
心のリハビリが中心。利用者が安心して表現できる場を作り、笑顔や意欲を引き出します。
施設での連携
・サービス管理責任者や支援員と連携して個別支援計画を立案
・利用者の身体・心理状態をチームで共有
・家族や医師とも情報交換しながら、長期的な支援を計画
サービス管理責任者や個別支援計画についてはこちら
まとめ
職種 | 主な役割 | 特徴 |
---|---|---|
OT | 日常生活動作の改善、環境調整 | 「生活の質」に重点 |
PT | 身体機能・移動能力の維持 | 「動ける身体づくり」に重点 |
MT | 音楽による心理的支援 | 「心の健康と表現」に重点 |
どの職種も「できることを増やす」よりも「今できることを維持し、生活を楽しめるようにする」視点が大切です。
生活介護施設/就労B型施設/入所施設それぞれでのOT・PT・MTの具体的な一日の動きや関わり方
では、生活介護/就労継続B型/入所施設それぞれでの OT・PT・MT の具体的な一日の動き を整理してお伝えします。
生活介護施設でのOT・PT・MT
生活介護は、重度障害のある方や日常生活に支援が必要な方が多い施設です。
OT(作業療法士)
午前
個別ADL訓練(トイレ動作、着替え練習)
手作業(塗り絵、パズル、調理補助)で集中力や手先の動きを維持
福祉用具や椅子・机の高さ調整
午後
集団レクリエーションの企画(簡単なクラフト、ゲーム)
介護職員へのポジショニング指導
個別の支援計画のモニタリング、記録
PT(理学療法士)
午前
個別リハビリ(関節可動域訓練、ストレッチ)
歩行練習、立ち座り練習
車いすや歩行器のフィッティング
午後
集団体操(転倒予防、関節ほぐし)
介護スタッフへ移乗介助方法のアドバイス
利用者の姿勢チェック、記録
MT(音楽療法士)
午前または午後
集団セッション(楽器を使った合奏、歌唱、リズム体操)
個別セッション(情緒不安定な利用者への音楽支援)
季節行事(クリスマス会、夏祭り)での音楽プログラム担当
就労継続B型施設でのOT・PT・MT
就労B型は、作業を通じて社会参加をめざす施設です。機能訓練よりも「作業を続けられる体力・集中力作り」が中心となります。
OT(作業療法士)
作業環境の調整(机や椅子の高さ、手順書の作成)
作業動作の分析(疲れにくい姿勢、作業効率アップ)
利用者のストレスマネジメント支援
職員に対して障害特性に合わせた作業指導法のアドバイス
PT(理学療法士)
作業前の準備体操プログラムの作成
肩・腰の痛みなどの身体不調に対するストレッチ指導
長時間座位の利用者へのポジショニングや休憩方法の提案
二次障害予防(腰痛、肩こり、姿勢崩れ)
MT(音楽療法士)
昼休みや作業後に短時間の音楽セッション
集中力低下・ストレス緩和のためのリラクゼーション音楽
モチベーションアップの音楽プログラム(BGM、作業リズムに合わせた音楽)
入所施設でのOT・PT・MT
入所施設は、生活支援+医療的ケアが必要な方も多い場所です。長期的な生活全般をサポートします。
OT(作業療法士)
毎日のADL練習(食事動作、整容、トイレ)
季節の行事・余暇活動を企画(園芸、工作)
福祉用具、ベッド周りの環境設定
個別支援計画の立案、家族への説明
PT(理学療法士)
毎日の関節可動域訓練、筋力維持トレーニング
車いすシーティング、褥瘡予防
歩行器や装具のチェック、更新
介護スタッフへの移乗・ポジショニング指導
MT(音楽療法士)
定期的な音楽プログラム(夕方の落ち着きの時間に実施)
回想法(昔の歌を使って認知刺激)
睡眠導入のためのリラクゼーション音楽
個別対応で情緒の安定を図る
まとめ
施設 | OTの主役 | PTの主役 | MTの主役 |
---|---|---|---|
生活介護 | ADL・作業活動支援 | 身体機能維持 | 集団活動で情緒安定 |
就労B型 | 作業姿勢・環境調整 | 体調管理・疲労予防 | 集中力回復・気分転換 |
入所施設 | 生活全般の自立支援 | 長期的な身体機能維持 | 心のケア・生活の楽しみ |
どの施設でも、支援員や看護師と連携して「生活全体を支える」 のが大きな役割です。
一日のタイムスケジュール例(時間割)
では、生活介護・就労継続B型・入所施設 それぞれのOT・PT・MTが関わる一日のタイムスケジュール例 を見てみましょう。
生活介護施設の一日(例)
時間 | 活動 | OT | PT | MT |
---|---|---|---|---|
9:30 | 登所・健康チェック | ADL確認、服装チェック | 体調・歩行状態確認 | – |
10:00 | 個別訓練 | 食事・着替え・作業練習 | 関節可動域訓練、歩行練習 | – |
11:00 | 集団活動 | クラフト、手作業 | 集団体操 | 音楽レクリエーション |
12:00 | 昼食 | 食事姿勢調整、食具提案 | 車いすポジショニング | 食事前の音楽(雰囲気づくり) |
13:30 | 午後プログラム | 作業活動(調理、園芸) | 姿勢確認、ストレッチ | 集団音楽セッション |
15:00 | おやつ・休憩 | 嚥下訓練 | – | 穏やかなBGM |
15:30 | 記録・情報共有 | 個別支援計画更新 | 介助方法指導 | 次回セッション計画 |
16:00 | 退所 | 見送り、家族へフィードバック | – | – |
就労継続B型の一日(例)
時間 | 活動 | OT | PT | MT |
---|---|---|---|---|
9:30 | 朝礼・体調確認 | 作業準備、作業工程説明 | 軽い体操提案 | 朝の音楽で雰囲気づくり |
10:00 | 作業開始 | 作業姿勢チェック、道具調整 | 姿勢指導、肩腰のストレッチ | – |
12:00 | 昼休み | 作業動作の振り返り | 休息姿勢アドバイス | リラクゼーション音楽 |
13:00 | 作業再開 | 集中が切れた人へ個別サポート | 疲れの出ている人へ運動指導 | 作業BGM |
15:00 | 休憩 | – | ストレッチ指導 | 短い音楽セッション |
15:30 | 作業終了・清掃 | 作業報告まとめ | – | 終了の音楽 |
16:00 | 振り返り・帰宅 | 作業評価、次回への調整 | 健康状態確認 | – |
入所施設の一日(例)
時間 | 活動 | OT | PT | MT |
---|---|---|---|---|
7:00 | 起床・整容 | 洗顔、着替え練習 | 起床時ストレッチ | 穏やかな音楽で覚醒 |
8:00 | 朝食 | 食事動作チェック | 車いすポジショニング | – |
9:30 | 午前訓練 | 手作業、園芸、余暇活動 | 歩行・筋トレ | – |
11:00 | 集団活動 | クラフト、ゲーム | 集団体操 | 音楽セッション |
12:00 | 昼食 | 食事支援 | 姿勢保持 | BGM |
14:00 | 午後訓練 | 余暇活動、日常動作練習 | 関節可動域訓練 | 個別音楽セラピー |
15:30 | おやつ | 嚥下確認 | – | リラックス音楽 |
16:00 | 自由時間 | 趣味活動 | 姿勢・移動補助 | 音楽鑑賞 |
19:00 | 夕食 | ADL練習 | – | – |
20:00 | 就寝準備 | 着替え、整容支援 | 就寝姿勢調整 | 睡眠導入音楽 |
ポイント
OT・PTは午前中に個別訓練を入れることが多い(集中力がある時間帯)
MTは午後や休憩時間に入ることが多い(リラックスや情緒安定目的)
記録・職員への助言は、日中活動の合間や終了後に行います。