
障害者施設の現場では、日々予期せぬ出来事が起こります。「もっとこうすれば良かった」という反省や、「これは上手くいった!」という発見を、個人の胸に秘めるだけでなくチームの資産にしてみませんか?
今回は、シンプルでありながら強力な振り返り手法である「KPT法」を、福祉現場での具体例を交えて解説します。
1. KPT法とは?(Keep / Problem / Try)
KPT(ケプト)法は、活動を3つの視点で整理するフレームワークです。
| 項目 | 意味 | 現場での捉え方 |
| Keep | 継続 | 「良かったこと」「次も続けたいこと」 |
| Problem | 課題 | 「困ったこと」「改善が必要なこと」 |
| Try | 挑戦 | 「次に試してみたい具体的なアクション」 |
2. 障害者施設でKPTを導入するメリット
福祉現場でKPTを取り入れると、以下のようなポジティブな変化が期待できます。
- ケアの質が向上する: 成功事例(Keep)を共有することで、職員間のスキルの底上げができます。
- 心理的安全性が高まる: 「誰が悪いか」ではなく「仕組み(Problem)をどう変えるか」に注力するため、前向きな議論が生まれます。
- 「やりっぱなし」を防ぐ: 次の具体的な行動(Try)が決まるため、会議が「愚痴の言い合い」で終わらなくなります。
3. 【実践例】ケーススタディで見るKPTの書き方
例えば、「レクリエーションの実施後」をテーマにしたKPTは以下のようになります。
Keep(良かったこと)
- 利用者Aさんが、普段見せない笑顔で参加してくれた。
- 事前準備のチェックリストを作ったので、忘れ物がなかった。
- 声掛けのタイミングが良く、全体がスムーズに進行した。
Problem(課題・困ったこと)
- Bさんが途中で飽きてしまい、立ち歩いてしまった。
- 車椅子スペースの確保が甘く、移動が窮屈だった。
- 職員間の役割分担が一部曖昧で、特定のスタッフに負担が偏った。
Try(次に試すこと)
- (Bさんへの対策) 次回はBさんの好きな音楽を BGMに取り入れてみる。
- (環境整備) 事前に車椅子の配置図を作成し、床にテープで印をつける。
- (役割) 進行表に「全体補助」「個別対応」の担当名を入れる。
4. 失敗しないための「運用のコツ」
せっかく導入しても、形骸化しては意味がありません。成功させるためのポイントは3つです。
① Keepをたくさん出す
日本人は真面目ゆえに「反省(Problem)」ばかり探しがちです。しかし、モチベーションを維持するには「褒め合い・認め合い」が不可欠。「〇〇さんの声掛けが素敵だった」といった些細なKeepを歓迎しましょう。
② Problemは「人」ではなく「事」に向ける
「〇〇さんが忘れた」ではなく「忘れないための仕組みがなかった(Problem)」と考えます。攻撃的な空気を作らないことが、本音を引き出す秘訣です。
③ Tryは「明日からできること」にする
「意識を高く持つ」といった抽象的な目標はNGです。「朝礼で必ず確認する」「マニュアルの3ページ目に追記する」など、誰が・いつ・何をするかを明確にします。
5. まとめ:小さな「Try」が大きな変化を生む
障害者施設の仕事は正解がないからこそ、チームで知恵を出し合うプロセスが重要です。
まずはホワイトボードや付箋を使って、週に1回15分から「KPT」を始めてみませんか?一人の気づきがチームの力になり、最終的には利用者の皆さんの安心と笑顔につながっていくはずです。

「一生懸命」で燃え尽きないために。福祉のプロが実践する「心の境界線」の引き方
障害者施設で働く職員が燃え尽きないための「心の境界線(バウンダリー)」の引き方を解説。共感疲労を防ぎ、プロとして長く働き続けるための感情コントロール術やセルフケアのコツを紹介します。「一生懸命すぎて疲れた」と感じる支援者の方、必見です。

自己否定とセルフコンパッションの関係|責める心から回復する視点
障害者施設で働き、自分を責めてしまう職員の方へ。自己否定が起こるメカニズムと、心の回復スキル「セルフコンパッション」の実践法を解説します。自責の念を和らげ、燃え尽きを防ぐための自分への接し方を学び、持続可能な支援の形を見つけましょう。

障害者施設職員の「失敗したときの関わり方」|自己肯定感を下げない声かけと4つの工夫
障害者施設で利用者が失敗した際、どう声をかけるべきか悩んでいませんか?本記事では、自己肯定感を下げない関わり方のポイントや、具体的なOK/NG例を解説。支援員のスキルアップや、信頼関係の構築に役立つ実践的なテクニックを紹介します。

